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大日本水産会
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BUTTON FAO:IUU漁業対策計画
ロシア漁業国家委員会 工学博士候補
イ・ゼ・シネリニコフ

 2001年3月2日までローマで開催された第24回FAO水産委員会(COFI24)で審議された重要な問題の一つに、IUU(違法、無報告、無規制)漁業の防止、抑制、廃絶がある。この会議でIUU漁業の防止、抑制、廃絶のためのIPOA(国際行動計画)に関する採択がなされたのである。以下、IUU漁業を略して違反漁業と呼ぶことにする。違法漁業対策に関する各国の協調体制の必要性については、1999年2月のCOFI23にて初めて審議された。この委員会で採択された決定事項は、責任ある漁業のための行動規範の実施促進を目的とする1999年3月のロシアを含むFAO水産大臣会合にて支持され、承認された。この会合で採択された決定を実施すべく、FAOはオーストラリア政府のサポートで当該問題に関する専門家会合を2000年5月に組織した。この会合で策定された違法漁業防止計画草案は2000年10月及び2001年2月の技術会合において完成され、この問題に関する各国代表の意見や要望が反映された。そして最終的には上記COFI24において、計画は若干の修正を加えて満場一致(コンセンサスで)で採択された。

 指摘したいことは、この国際文書の積極的な策定は一定の根拠を有していることである。違法漁業対策のために努力を結集することについては、多くの国及び地域漁業機関サイドより長きに亘り希望が、というより、正確に言えば、要請が述べられてきた。マーケットで需要の多い多くの魚種は、その保護、合理的利用強化措置の実施にもかかわらず、過度に漁獲されている。

 違法漁業の抑制手段として利用され得る国際協定は効果が不充分であったり、まだ発効されていなかったりする。一方、多くの国は関心の薄さや自国経済の状況からして必要な政治的意志やこの問題の重要性に対する理解を示していない。こうした違法なものを含む漁業の実施及び水産物の貿易は多くの場合一地域の範囲だけにはとどまらない。経済のグロバリゼーションは世界海洋の生物資源にも及ぶ。このようにして違法漁業も国際性を帯びてくる。このため、一国で講じられる、或いは、同様の措置が実施されることに関心のあるメンバーから成る地域漁業機関によって講じられる何らかの違法漁業防止措置は無効になり、意義を失っており、地球規模的措置及び協調行動実施の必要性が生じているのである。

 違法漁業は漁業資源の正確な評価やその利用度合いに深刻な影響を与えている。これは、漁獲予報精度の低下、統計データの正確さの欠如をもたらすとともに、資源管理において根拠ある科学的決定を下す可能性を奪うものである。責任ある漁業のための行動規範の目的は、詰まる所、現世代、次世代のための海洋生物資源の長期的、持続的利用にあり、大規模な違法漁業が継続されれば、この目的達成は不可能である。世界漁業の現場における多くの例が違法漁業のはびこりようを示している。例えば、南極水域のメロ(この魚種の製品量は統計によればその許容漁獲量の倍以上となっている)、ロシア極東沿岸におけるカニ(ロシア沿岸のおける公式漁獲統計はカニの搬入された国の通関統計による輸入量の数分の1である)の漁獲がそれである。策定された保護・管理措置の実現に参画しない国の旗を掲げた漁船、つまり、いわゆる便宜地籍船による操業規模拡大を示す情報には特別な懸念が生じている。

 違法漁業対策は、国際的な海洋法規、貿易協定、主権、船舶航行に関する管轄権及び取締り・監督行為等の規定より派生する国家の権利・義務と関連した多くの局面を有している。COFIの会議では、現行の計画は、責任ある漁業のための行動規範の一要素であり、その規範の今後の実行を目指した自発的活動であるとされているが、広範囲で総括的な基礎に立った違法漁業問題の解決の必要性が指摘された。

 国際行動計画の中身は序文、違法漁業種類の性格、行動計画適用範囲、目的及び原則から成っている。

 違法漁業の防止、抑制及び廃絶に関する措置の実施の章は、国際協定から派生する措置、違反に対する罰則規定を含む各国の法律、漁業管理に関連する措置、操業及び漁獲物の最初から最終消費者に至るまでの段階のモニタリング、管理、監視措置、各国の行動計画、国家間協力、旗国の責任、寄港国の措置、合意された市場措置、調査、地域漁業機関の活動、開発途上国の特別な要求、報告、FAOの役割といった部分から成っている。

 上記の国際行動計画のうちいくつかについて検討を加えてみよう。まず着目されるのは違法漁業の種類である。英語の、illegal, unreported and unregulated に合致するロシア語の専門用語はまだ他にあるかもしれない。ただし、ここでは仮訳として、「違法、無報告、無規制」としておこう。

 「違法漁業」とは、行動計画からすれば、ある国の管轄下にある水域において、この国の許可なく或いはその法律・規定に違反してその国の或いは外国の漁船が行う活動、然るべき地域漁業機関の加盟国のフラッグを掲げつつも、この地域漁業機関の定めた加盟国が遵守義務のある保存・管理措置、適用される国際法の規定に違反して、または然るべき地域漁業機関に協力する国によって定められたものを含む各国の法律または国際的な義務に違反して行う活動を意味する。

 「無報告漁業」とは、各国の法律や規則に違反して各国の然るべき権限のある当局にその行動についての情報が伝えられなかったか、伝えられても歪曲された形で伝えられた行動、または地域漁業機関の管轄水域にあって行われた、この機関が定めた報告要領に違反してその行動についての情報が伝えられなかったか、伝えれても歪曲された形で伝えられた行動をいう。

 「無規制漁業」とは、地域漁業機関の適用水域において国籍不明か、当該漁業機関の加盟国以外の国のフラッグを掲げる漁船により、或いは、当該漁業機関の資源保護・管理措置にそぐわない方法で、或いはそうした措置に違反する方法で漁業組織により行われる漁業活動、または国際法に即した生物資源保護に関する各国の責任と両立しない水域において或いは魚類資源に対して行われる漁業活動をいう。

 しかしながら、国際法規に違反しないある種の未規制漁業が看過されている。こうした漁業には現行のIPOAに盛り込まれている措置は適用できない。

 違法漁業対策に効果的にIPOAを活用できるようにするために実施すべき主要原則は次の通りだと専門家は考えている。

  • 計画は地球規模的な性格を有するべきであり、すべての国及び国際機関によって実施されるべきであること。水産団体、公共団体、組合組織、個人利用者等を含むすべての関係国が違法漁業廃絶運動に参画できるようにすること。
  • 時宜を得た、遅くとも3年以内の、国別行動計画並びに地域規模的及び国際的内容の措置の策定及び実施を念頭においたIPOAの段階的及び全体的に調整のとれた実施が前提とされること。
  • 計画される措置は漁業操業に影響するすべての要因に作用するものであり、包括的、綜合的アプローチのできるものであること。寄港国の措置、沿岸国の措置、法人または個人を違法漁獲または関連した活動に参加させない、或いは、参加を防止する措置を含む国際法にそったすべての法的手段を活用すべきである。
  • IPOAに関する決定採択プロセスの透明性の確保及び水産業、自然保護その他の関連組織代表者の決定採択プロセスへの効果的な参画は極めて重要であると認められること。
 違法漁業予防に関する国際行動計画に盛り込まれている、上述したように、包括的、綜合的アプローチを有すべき基本的措置とはどういうものなのか?第一に、IPOAの効果的実施のためには、1982年の国連海洋法条約、1993年のフラッギング協定及び1995年の国連公海漁業協定への加盟、その批准或いは採択が必要である。これら国際協定に参加していない国はこれら協定の条件に背く行動をとるべきではない。各国にはまた「責任ある漁業のための行動規範」の完全且つ効果的な実施が求めれらている。

 国別レベルではIPOAが違法漁業防止に効果的に作動するよう法律の改善が必要である。就中、法律により電子データや新技術の活用を含め、規準や許容誤差の検討が盛り込まれる必要がある。また、自主的に他国との協力により、可及的速やかに違法漁業に携わる人間を特定する措置、また、こうした活動を抑止する効果的措置の策定を確保する措置をとる必要がある。各国は、自国漁船のフラッグを約定を果たしていない国のものに換えることにつき自国民を抑制しなければならない。違法漁業に対しては相当に厳しい罰則規定の適用を確保し、こうした漁業から得ている犯罪的収益を喪失せしめる必要がある。各国の法律の枠内で、違法漁業に加わっている会社、漁船、個人に対する補助金も含めた支援を絶つための経済的措置も講ずる必要がある。

 計画には、操業の開始から漁獲物の陸揚げ、水産物の最終消費者までの順を追ったすべての段階における漁業の取締り、監視の広範な発展が盛り込まれている。この目的のためには、操業許可証発給手続きの導入、漁船、船主及び運行者登録制度の導入、地域的或いは国際的規準を考慮したVMSの導入、監視制度及びオブザーバー活用法の発展等が想定されている。各国は、IPOAの規定が自国の漁業管理計画や予算の一部となるように国別計画を策定し、実施を開始しなければならない。自国フラッグによる漁船登録に際し各国は、当該漁船が旗国の責任を果たし、違法漁業に加わらないよう納得させる必要がある。また、可能な限り、旗国の規準及び行動は、フラッグを換えたいと考える船主が現われないように、統一化を図るべきである。漁船を自国フラッグで登録受け付けした国は、当該漁船に対しては、自国の管轄水域または公海水域における操業許可証、沿岸国の沿岸水域における当該漁船の操業期間に対しその国より発給される許可証を確保しなくてはならない。各国は、自国フラッグを掲げることを許可された漁船の登記簿を作成しなければならない。公海水域での操業許可証を有する漁船の登記簿には、船名、登録番号、過去の船名(もしあれば)、船籍港、過去に掲げた国旗(もしあれば)、国際無線呼び出し符号、船主(一人または複数)の氏名と住所、建造場所、建造年、漁船の型式、長さ等フラッギング協定に規定されている情報が記載されている必要がある。

 また、実行可能な限り、船舶登記者或いは船舶運航者または管理者の氏名、住所、船舶登記時の写真または最終の修理後の写真及び漁業規則違反履歴等登記簿に記入することが想定されている。

 違法漁業防止策の一つに漁船に対する操業許可証の義務的発給制度の導入がある。旗国は、当該国の管轄権の及ばない水域で自国フラッグを掲げて操業する各船が許可証を所有することを確保しなければならない。許可証には船名、規定があれば許可証取得者氏名、並びに漁場、漁獲枠、許可証の有効期間、漁獲許可魚種、漁具及びその他必要事項が示されなければならない。

 許可証発給条件には、必要な場合、使用される船舶モニタリング・システムに関する情報、漁獲情報(時系列的漁獲量、漁獲努力量のデータ、漁獲対象魚種別、混獲魚種別総漁獲量及び総漁獲尾数、魚種別廃棄量データ他)、転載に関する情報、オブザーバー乗船、操業日誌記載、必要な航海機器の装備、国際的に認知された規準に見合った漁船及び漁具の標識等が含まれる。

 それとともに旗国は、洋上転載に係わるその国のすべての漁船、輸送船及び補助船がこの種の転載に対する許可証を事前に取得、所持し、その国の当局に対し転載月日、水域、転載物の漁種別漁獲量及び漁場、船名、登録番号、所属及びその他転載に関連する船舶のデータ、転載物の陸揚げ港を通報することを確保しなければならない。

 旗国は漁獲量及び転載に関する通報より情報を収集し、水域別、魚種別にとりまとめ、必要に応じ、適用される守秘条項を考慮しつつ、FAOを含む然るべき地域及び国際機関に対し送付しなければならない。

 寄港国の権限が著しく強化されている。港湾当局は、漁船の入港を許可する前に、当該漁船より正当な入港申請、操業許可証の写し、航海に関する詳報及び船内の水産物の重量に関する報告を要求しなければならない。当該漁船が違法漁業に加わっているという確かな証拠がある場合には、寄港国は自国の港湾で当該漁船が水産物の陸揚げ或いは転載を許可してはならず、この件につき旗国に通報する必要がある。寄港国は、漁船に対する自国の取締権限を行使する過程で旗国に対し、また、必要な場合には然るべき地域機関に対し下記の情報を収集し提供しなければならない。即ち、漁船の旗国及び標識、船長及び漁労長の氏名、国籍及び資格、漁具の種類、漁獲物の有無、量、原産地、魚種及び形状、その他地域漁業機関或いは国際合意の定める情報。

 取締中に漁船が旗国の管轄権の及ばない水域において違法漁業に加わっていることが判明した場合、国際法の規準に照らし受容可能な行動を除き、寄港国は事の要点を当該漁船の旗国に対し、また、必要な場合には然るべき沿岸国及び地域漁業機関に対し直ちに通報する。寄港国は旗国の了解があれば、或いは要請により、他の行動をとることもできる。この際寄港国は自国の法律に従い収集された情報の秘密を保護するものとする。

 違法漁業予防に関する協調行動における新たな要素として市場原理に立脚した措置がある。この措置は公正で、透明で、非差別的であり、各国の貿易に対する権利を認める原則に合致し、持続的漁業の確保を促進するものでなければならない。各国は違法漁業により漁獲された魚の自国領内における販売防止に関しすべて必要な、国際法にかなった措置をとらなければならない。貿易上の措置は、他の措置を講じても違法漁業を防止できない場合に限り、また、関係国と事前協議を終えた後でなければ実施してはならないと想定されている。一方的な措置を講ずることは排除しなければならない。こうした措置の中には多国間合意を基礎に決められた漁獲量に関する文書やその証明書に対する要求、水産物輸出入管理或いは禁止に関連する措置がある。貿易上の措置は具体的な資源に対し或いは魚種に対し、違法漁業に従事している漁船の経済的刺激を減ずるか無くすかの方法で講じる必要がある。それとともに各国は水産物の流通経路を追跡できるように自国の市場の透明性を高める措置をとる必要がある。然るべき要請があった場合、各国はそれぞれの国の責任ある水域で不法に漁獲された水産物の貿易防止に関し任意の国に協力しなければならない。こうした協力は両国間の合意を基礎に或いは協力を要請した国の管轄権を最大限に尊重しながら提供されることとなろう。違法漁業防止の有効な措置としては、さまざまな関係者(輸入業者、輸送業者、消費者、設備納入業者、銀行関係者、保険代理店等)が操業を行っている漁船との商取引上蒙った否定的結果についての知見を反映し、こうした行為を法律違反であると認めるような各国の法律や法規の採択が想定される。

 違法漁業防止に関するIPOAで重要な役割が地域漁業機関に割り当てられている。例えば、IPOAに基づき各国は、各国の関係する地域漁業機関で決定された違法漁業に対する政策、措置の実施に際し自国の行動の適合性を確保し、また、現在まだ存在しない地域機関設立に協力しなければならない。然るべき地域機関に参加しない国は、この地域漁業機関の定めた資源保護管理措置の適用に対する合意或いはこうした措置と両立し得る措置の実施の合意、また、各国のフラッグを掲げる漁船はこれらの措置を損なわないという保証といった形で各国の国際的約定に基づき地域機関と協力する義務からは免除されない。地域漁業機関の枠内では次の違法漁業防止措置が検討されるべきである。即ち、必要であれば、地域漁業機関の違法漁業防止能力の向上を目的とした組織強化、報告様式の作成とその手続き、違法漁業に従事しているかそれを幇助する漁船に関する情報交換に関するインフラ整備及び協力、地域漁業機関の管轄水域で操業する漁船のうち、操業許可証を有するものと、違法操業に従事するか、それれを幇助しているとみなされている漁船のリストの作成、違法漁業の取締を目的とした貿易情報の作成及び利用方法の策定、リアルタイムによる漁獲、漁船位置のモニタリング方法、監視及び取締方法、及び必要とあれば、水産物の陸揚げを制御する技術の革新、港湾での取締の技法、転載に関する取締の技法及び法規管理の新技法の革新、また、必要とあれば、船長の権利義務を考慮した、国際法と両立し得る監視員の乗船手続き及び同監視員による監視手続きの策定、監視計画の拡張、IPOAに基づく市場措置の策定と適用、漁船が違法漁業に従事している或いはそれを幇助している度合いをはかる規準の確定、一般大衆の知識向上のための啓発活動計画の策定及び実施、地域行動計画の策定。

 各国は地域漁業機関を通じて行動し、地域漁業機関の活動水域における違法漁業に関する情報を収集し、他の地域機関及びFAOに対し定期的に、少なくとも年1回以上は提供しなければならない。その情報とは違法漁業の程度や性格に関する評価、違反者に対してとられた措置、許可証所有漁船及び違反漁業従事漁船のリストである。各国は、地域漁業機関を活用し、非加盟国の当該地域漁業機関への完全加盟を鼓舞することとする。可能ならば、現行の国際協定及び国際法規準を考慮し、漁業資源保存措置及び地域漁業機関の定めた措置の実施への非加盟国の参画及び協力を鼓舞する必要がある。

 各国及び地域漁業機関は、「行動規範」の実施過程に関する自らの情報の一部として、違法漁業防止に関する自らの計画の実施状況を2年に1度FAOに報告することが想定されている。FAOはそれを受けて適時に公表し、また、手持ち情報に基づき違法漁業を育む要因及び原因の分析を行い、FAOにてこの目的のために造成される通常計画資金と予算外資金の双方を用いた各国技術支援特別プロジェクトの策定による違法漁業防止計画の国別計画及び地域計画の策定と実施を促進することになる。それとともにFAOは国際海事機構等の然るべき機関と協力し、違法漁業問題の今後の研究を行う必要がある。特にFAOは、その実効性、偽造の可能性の減少、貿易における不必要な障壁の排除を確保する電子回線を含む水産物の漁獲量の証明書や書類の書式の標準化を促進することとなる。FAOはまた、この他にもフラッギング協定第6条に規定されている情報を含む地域的及び地球規模的データベースの作成と保持についての合理性を検討する必要がある。COFIは2年に1度このIPOAの実施状況を評価することとなる。

 以上がCOFI24で採択されたIUU漁業に関する国際行動計画の内容である。ロシアはFAOのメンバーではないが、この問題に関するロシアの国益はFAOとの密接な協力を要求するものであり、また「責任ある漁業のための行動規範」に関しても同様である。小規模ではあるが、外国水域及び公海水域において継続している我が国漁船の操業、沿岸水域における資源利用に関する近隣諸国との広範な協力及びロシア水産物の輸出構成に占める大きさは、資源の合理的及び持続的利用の深刻な妨げとなる違法漁業の防止に対するロシアの客観的な関心を物語るものである。ロシアには操業のモニタリングに関する大きな実績があるが、経済と貿易のグロバリゼーションに起因する上述した要因により、違法漁業発生の可能性は残っている。このため他国との協力及び協調措置の実施は切実であり、必要である。地球規模で適用されるIPOAの多くの方向性、つまり、主に発展途上国に必要な許可義務制、漁船の取締、モニタリングの実施等はロシアにとってはある程度経験済みのことである。それと同時に、違法漁業の防止のためには二国間協力及び然るべき地域漁業機関をベースとした協力が殊更重要である。貿易上何か追加的な障害をもたらさないような、然るべき情報の交換、違法漁業廃絶に向けた協調措置、漁獲データコード化及び水産物証明の標準様式の策定といった面でそうした協力の発展が期待される。漁船のフラッグの交換手順の整備及び旗国としての責任の完全履行がロシアにとって本質的な問題の一つになるかもしれない。このためロシアのフラッギング協定への加盟の可能性を再検討し、また、このために取るべき綜合的措置を検討する必要がある。これとは係わらず、IPOAと調和し、また、ロシアが加盟している、或いは関心を示している地域漁業機関の今後の行動設定の前提となるような、違法漁業防止に関する国別行動計画の策定に今取りかかることは理に適っていると言えよう。

(出典:「漁業」2001年第4号)