水産物は農産物などとは異なった特性を持っているので、その流通機構はより複雑です。
生鮮魚介類は腐りやすいため、手早く流通させ処理する必要があること、魚は種類が多く、大きさや品質もまちまちで、一定の規格化が難しいこと、さらに魚獲量の変動が大きいので、漁獲時期・場所共に集中する場合があることなどが水産物の流通に複雑さを加えています。
しかし、近年は生産者から消費者に至るまでの物流システムが国際的にも整ってきており安定供給に貢献しています。冷凍技術、設備、輸送システムのめざましい発達は、年間を通じた水産物の供給を可能にし、品質を落とすことなく長距離配送、長期保管を可能にしています。
日本近海や遠洋で漁獲された魚介類は、まず漁港に水揚げされます。漁港には大小さまざまな漁船が出入りし、コンベアなどを使って、とれた魚を水揚げします。大きな漁港は、単なる魚の水揚げ地にとどまらず、新鮮な魚をすぐに加工できる加工場や冷凍工場、輸送設備や船を修理する造船所などが併設され、その地域の水産業全体を支える重要な役割を担っています。
日本の代表的な漁港には釧路、八戸、気仙沼、石巻、小名浜、銚子、焼津、境港、下関、福岡、松浦、長崎などがあり、いずれも沖合・遠洋漁業の基地になっています。
水産物が港に水揚げされると、まずは産地の仲卸がこれを買い付け、消費地の市場へ輸送したり、缶詰などの加工品の原料として、地元の水産加工場へ売り渡したりします。消費地市場では輸入水産物なども搬入され、卸売業者がこれを買い付け、仲卸業者をへて、魚屋さんやスーパーで売られ、私たちの家庭に届きます。また、水産会社などが水揚げされた魚を工場で加工して、直接市場に出荷するケースもあります。
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